在宅医療を選ぶ方の中には、これまでのように、悪くなったら病院に入院して治療したいと考える方と、自宅でできる範囲の治療やケアを受けたいという、治療よりも生活を重視する方がいらっしゃいます。そのどちらが正しいということはありませんが、最近は後者の価値観を大切にされる方が増えてきたように感じます。
最期まで家で療養し、できれば苦しまず穏やかに逝きたいと考えておられる方も少なくありません。しかしながら、介護されているご家族が高齢だったり、独居だったりと、介護力に問題があることもあります。また、初めて経験する介護で、衰えていく肉親を傍で見ているのが怖くて不安になり、やむを得ず最期まで家にいることができないケースを多く経験してきました。
緩和ケア病棟は、そのような方の砦の一つであると思われるかもしれませんが、入院対象は癌に限られています(正確には後天性免疫不全症候群:エイズと心不全の一部も含みます)。しかしながら、日本人の死因の約3/4は癌ではありません。緩和ケア病棟の対象にならない多くの方々にとっても、穏やかに逝きたいという老いの願いに寄り添う医療が必要だと思います。
穏やかな最期を家と同じような雰囲気で、『コンセプトは家』の病床(全個室)を備えた診療所をつくり、地域の皆様のニーズに合った生活の支援を続けていこうと考え、現在、川西市内に建築中です。2024年2月のオープンを目指しています。